ハードディスクの構造
主要構成部品
- フレーム(シャーシ)
- スピンドルモータ
- プラッタ(ディスク)
- ヘッド(ヘッドアッセンブリー)
- VCM(ボイスコイルモータ)
- 制御基板
主要部品の概略
フレーム(シャーシ)
一般的にアルミダイキャストで作られ、上記スピンドルモータ以下の部品を全て搭載する。HDDは精密な精度機械であるため、ダイキャスト(金型)で作られたものを、精密切削加工によって仕上げてある。
1.8インチ以下のHDDにおいては、アルミダイキャストではなく、アルミ板で作られたものも存在する。
スピンドルモータ
フレームに固定され、ロータ(回転子)にプラッタ(ディスク)を固定して回転させるモータ。5400、7200、10000、12000、15000回転/分(rpm)のような高速で回転することが要求される。
プラッタ(ディスク)
ガラス、アルミ板で作られ、表面にデータを磁気で記録するための磁性体がスパッタリング等の真空蒸着で形成されたもの、HDDの初期には磁性体を刷毛で塗布していた時代もあった。
ヘッド
プラッタ上に存在する磁性体に対し、必要な情報の書込み/読出しを行うための部品。プラッタが高速回転しているので、プラッタに接触することなく極微小な隙間(10nm程度)を保ち浮上した状態で読み書きを行う。
VCM(ボイスコイルモータ)
ヘッドをプラッタ上の必要な情報の存在する場所まで移動させるための部品。高速で移動することが必要なため、強力な磁石とHDD上では最も大きな電流によって駆動される。
制御基板(PCB=プリントサーキットボード)
基盤と書かれていることが多いが、誤りであり基板が正しい。HDDの動作を制御するための電子部品、回路が構成されている。
フレーム(シャーシ)の故障を考える。
フレームが故障の原因になる事があることはあまり知られていない。一見強固なフレームが何故故障の原因となるのか。
現在のHDDは非常に精密な機械であり、ヘッドの浮上距離(プラッタとの隙間)が10nm(1ミクロンの1/100)程度であり、トラック間隔が0.2ミクロン程度である現実を認識する必要が有る。一見強固に見えるフレームでも、本体に取り付ける場合のネジ締めによる変形などを無視することは出来ない。
それ以上に影響が大きいのが金属の熱膨張である。現実のHDDを見ると、フレームがアルミで、蓋がステンレスであることがある。アルミの熱膨張率はステンレスの2倍以上ある。 更に、ダイキャスト固有の問題も存在する。ダイキャストは、溶融した金属に圧力を掛けて金型に流し込み、冷却して作るものである。その為に固まったあとでも、その圧力によって発生した内部応力と呼ばれる力が残存し、時間が経つと変形する(残留応力の開放)。 また、金属全般に言えることだが、熱膨張率も電気抵抗もどの場所をとっても均一ではない。溶融金属から作られたものでは、流れの方向に膨張し易く(電気抵抗は小さく)、流れの直角方向の膨張少ない(電気抵抗は大きい)。このために、温度変化によってHDDのフレームにも「捩れ」が発生するのである。(この現象は、材料学の専門家にとっては常識である)
この「捩れ」によって、プラッタとヘッドの位置関係が微妙に変わり、リードエラー(読出しエラー)の原因になることがある。
ここで、余談であるが・・・
故障したHDDを冷蔵庫(或いは冷凍庫)に入れると直る。 の様なことが、Web上で言われているが、必ずしも間違ってはいない。
使用しているうちに捩れが発生、ある限界までは温度が下がると元の状態に戻っていたが、限界を超えた時に、蓋を取り付けているネジによる押さえが利かなくなり、蓋とフレームの位置関係が微妙に変化してしまい、温度が下がっても元の位置に戻らなくなってしまった・・・。 その場合、元に戻す手段として、元の温度よりもっと低い温度に下げる・・・。そうすると、またネジの押さえる力の限界を超えて、本来の位置関係に戻る!
理論的に裏づけ可能なのだ!
データ復旧の現場では、現実に、特定のメーカの特定の機種においては、特定のネジを緩めるだけで故障が解消することもあるし、過酷な条件で使用されていたHDDで多発しているリードエラーがドライヤーで過熱することによって解消し、データの読み出しに成功することもある。当然、その反対に扇風機で風を当てる方がよい結果を生むこともある。